アルバム・ライナーノーツ その2  text by 田家秀樹(音楽評論家)

 スピッツのインタビューには洋楽のバンド名が頻繁に登場する。
草野マサムネは「ユーライアヒープのライヴにすごく感動した」という話もしていた。草野マサムネと田村明浩が学生時代に入っていたサークルの名前は“重音部”だったと言う。“軽音楽”ではない。

 そんなアマチュア時代、ロック少年時代の片鱗を感じさせるのも今回のアルバムの一つの特徴だろう。何しろ「醒めない」は“ロック大陸の物語を育てる”歌なのだから。バンドの初期衝動に対しての真っ直ぐな今の気持ちが音と歌になっている。レコーデイングの最後に出来たという曲が、このアルバムを明快に物語っている。

「やっぱり一番印象的だったのが「醒めない」ですね。サビのところにガーンと来た。自分の気持ちと照らし合わせても入り込める。ジーンと来ます」(三輪テツヤ)

「音数もそうだけど、シンプルにロックを表現するという考えは強くなってますよね。タッチだったり音色だったり自分が出来る事を突き詰めて、それを思い切りやろうという実感が好き。バンドでビートを出すのが楽しいですね」(﨑山龍男)

「自分の出来る事の限界も知ってるんで、精一杯その中で抗おうかなと。抗ってやるぜ、みたいな。これしか出来ない、ちっぽけな自分達だけど精一杯のことをやろうと思ってます」(田村明浩)

 「醒めない」の中には、デビッド・ボウイの初期を象徴する“アンドロジナス”という言葉も登場する。両性具有。創作期間に彼が亡くなったのだそうだ。それでいてアルバムは、クラシックロックへのオマージュばかりではない。「ハチの針」は、絶滅に瀕しようとしているウッドストック世代への愛情溢れる挑発のようだ。