アルバム・ライナーノーツ その1  text by 田家秀樹(音楽評論家)

 スピッツの新作アルバム『醒めない』には、二つの大きな特徴がある。
 もちろん、それらは過去のアルバムの中にも見え隠れしていたスピッツならではの個性ではあるものの、それらが満を持したように凝縮、純化されている。
 一つは“音”だ。“バンド”というこだわりが前面に出ている。前作の『小さな生き物』からアルバムにストリングスを使わなくなった。
「自分達も昔そうだったんですけど、今、ロック寄りのポップなサウンドってストリングスに頼り過ぎてるということもあって。デビッド・ボウイみたいなストリングスの入り方はカッコいいと思うけど、J-POPの泣けるメロデイにストリングス、みたいなのはもういいかな、そこから離れたいというのはありましたね」(草野マサムネ)

 ロックバンドとしてのスピッツ。彼らの今を象徴しているのが、シングルになった「みなと」とアルバムのタイトル曲でもある一曲目「醒めない」だろう。
「みなと」のイントロの哀愁感は、これまでのスピッツとは明らかに違う。
「醒めない」は、まさにバンドの音だ。
「「みなと」は、グレッチのセミアコを使ってるんですが、ポール・マッカートニーを見に行って、バックの人が使っていた緑色のグレッチに一目惚れして探して買いました(笑)。バンドに合わせたら今までにないいい感じの音になりました」(草野マサムネ)

「今回、草野のデモテープで殆ど形が出来てましたからね。それをテツヤがコピーしたり加わったりすることでニュアンスが変わって微妙なグルーブが出る。それぞれの認識のズレがスピッツサウンドになる瞬間がありました。最初の頃はそれが分かってもらえなかった。もちろんこれが終着じゃないけど、完成されたアルバムが出来た気がします」(田村明浩)